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【小説】リゾナントブルーのМVからストーリーを想像するスレ 第122話 [無断転載禁止]©2ch.net

1 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/05/26(木) 21:01:07.97 0
だが、「悪魔」は首を振る。そんなことはどうでもいいとばかりに。
そして、静かに、言った。

「あんた、いちーちゃんを殺したでしょ」

 第121話『リゾナンター爻(シャオ)』 より


前回のお話はこちら↓
【小説】リゾナントブルーのМVからストーリーを想像するスレ 第121話
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287 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/06/03(金) 20:11:38.15 0
>>276-280  の続きです



大きな画面に、五人の老人たちが嬉々として人差し指を掲げているのが見える。
彼らの信奉者にとってそれは、神の指。それまでの屈辱を晴らし一気に溜飲を下げる、正義の鉄槌だった。

「我々がこの指で同時にスイッチに触れた時。君たちの栄光は灰となる」
「精神エネルギーを起爆剤とした、破壊兵器。君のところの科学者も実に便利なものを作ったものだ」
「十分な量を蓄積するには時間がかかるが、周囲の土地を汚染しない、クリーンな兵器。素晴らしい」
「量産できれば、能力者などという危険な存在に頼ることもなく、諸外国と軍事力で渡り合える。なあに、心配しなく
てもいい。あの科学者にはすべてのノウハウを吐いてもらうさ」
「さて。何か最後に、言い残すことは?」

慈悲深い演出。それすらも悪意に塗れている。

「そやね…」

裕子は、昏き部屋の天井を仰ぎ。
それから。

「なーにがブラザーズ5や。あまりのネーミングセンスの悪さに、えずきそうやで。おえっ、おええっ」

顔を思い切り顰め、手のひらを口の前に差し出すポーズを取る。
脆弱な血管たちが、ぷつぷつと切れる音が聞こえた。

288 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/06/03(金) 20:12:22.62 0
「それでは…よい死出の旅を」

だが、怒りの感情はすぐに収められる。
指先ひとつで憎き相手を葬り去ることができる。その喜びが憤怒を上回ったのだ。
皺に覆われた、節くれだった五本の人差し指が、同時に発射スイッチに添えられた。

訪れる静寂。
大モニターの前に傅く小さなモニターに映し出された老人たちも、固唾を呑んでその瞬間を待つ。
だがしかし。一向に、破滅の時は訪れない。
彼らが、めいめいの場所から覗いている、ダークネスの本拠地を映した画面は、消えてはくれない。

疑問は焦りとなり、やがてざわめきとなって波のように押し寄せた。

「ブ、ブラザーズ5!これはいったい!!!」
「ええい、狼狽えるな!!こんなものは、慎重にやれば!!!!」

堀内の叫び声を合図に、再び押されるボタンたち。
静寂。何も、変わらない。
暗闇の中で、裕子が一人佇んでいるだけだ。その体は、小刻みに震えている。

「なぜだ!なぜ発射されない!!」
「何度も起爆実験を行ったはずだぞ!!」
「こんなバカな!!」
「どうすれば」
「そ、そうだ!我々のタイミングが合わなかったのかもしれん!」

焦り、苛立ち、狼狽した挙句、老人たちは。
互いのタイミングを合わせるために、わざわざ、掛け声をあげてからボタンを押し始めた。
せーの、かちっ。せーの、かちっ。
その様子が何度も映し出されると、いよいよ裕子の体が大きく揺れ始めた。

289 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/06/03(金) 20:13:54.01 0
「は、ひっ、ははははは!!!!!」

裕子が、さもおかしそうに笑い始める。
小刻みに体を震わせていたのは、こみ上げる笑いを抑えていたから。
鼻白んだのはもちろん笑われた老人たちだ。

「き、貴様ぁ!何がおかしい!!」
「だって、そうやん。いい年こいたおっさんどもが、せーの、かちって!これが笑わずに…あぁ、思い出したらまたおかし
なってきた、はは、あはははは、おっさんが、ひい、せーのって、あ、あかん、腹よじれるぅ」

腹を抱え、苦しそうにしている裕子に、ついに老人1が声を荒げる。
怒りと恐怖が、ないまぜになりはじめていた。

「なぜだ!なぜ『Alice』が発射されないのだ!!」
「はぁ…はぁ…あーおかし…」
「答えろ!答えろ中澤ぁ!!」
「『Alice』はな、とっくの昔に紺野の手で回収されてんねん」

老人たちが、一様に耳を疑う。
そして、同じように自らの前の端末を操作し、リヒトラウムの地下格納庫の中継カメラに切り替えた。
画面には、見慣れた銀色の巨大なロケットが相変わらず静かに佇んでいる。

「ふざけたことを!『Alice』はちゃんとここにあるではないか!!」
「まさか!時間稼ぎか!!我らを謀るための罠か!何かの妨害を仕掛けたな!」
「すぐに技術者どもに解決させてやる!どのみち貴様らの運命は終わりだ!!」

目の前の事実に安堵し、再び老人たちが勢いづく。
が。

290 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/06/03(金) 20:14:30.72 0
「あんたらみたいなおっさんにはわからへんと思うけど。紺野は。『Alice』の基幹システムをそのロケットから抜き取
ってるんやて」
「な!なにぃっ!!!!!」
「つまりは…」
「そ。自分らが有難がってるんは…ただの、鉄の塊」

にぃっ、と裕子が微笑む。
老人たちの希望を打ち砕く、慈悲のない笑み。

「さて。最後に…言い残すことは?」
「ど、どういう意味だ…」

絶望に呆けている「ブラザーズ5」に、裕子が追い打ちをかける。

「さっき言うたやん。『粛清人』を差し向けたって」
「な、な、なんだと!!!!」
「あんたらが高笑いしてた時に指示出したからな。そろそろ着く頃やろ」

余裕のあまり、口笛さえ吹き始めそうな裕子。

粛清人の恐ろしさを最もよく知る人間たち。
それは昏き死神たちを意のままに寄越していた「ブラザーズ5」とて例外ではない。
今までに、彼らの敵対者たちがどのような末路を迎えたのか。
彼らは、まるで他人事のように惨劇について理解していた。
鋼鉄の爪に引き裂かれ、血まみれの鎌に四肢を切断された死体たち。中には、爆破されたのかただの肉塊になっていたも
のまであった。
それがまさか自らの身に降りかかるとは。夢にも思わなかったに違いない。

291 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/06/03(金) 20:15:10.57 0
老人たちは顔を引き攣らせ、血の気を失くし、涙を、鼻水を流しはじめる。
それでも、堀内だけは何とか踏みとどまっていた。それは、「ブラザーズ5」を纏める者としてのプライドからだけで
はない。

「我々を…舐めるなよ」
「それが最後の言葉ですか? 健気過ぎて泣けてくるわ」
「貴様らの粛清人…リゾナンターとの抗争でほぼ空位状態なのを、知ってるぞ」
「お生憎様。うちんとこ意外と、人材揃ってんねんで?」
「黙れえええ!!!!」

堀内が鬼の形相で、机を叩き、立ち上がった。
目は血走り、脂汗を垂らし、口髭を引き攣らせ。
最後の切り札を、切る。

「俺は!『先生』と、新たな契約を結んでいたのだ!!契約内容は我々五人の護衛!!!配備されるのはあの組織が誇
る最強の七幹部クラスの能力者の達人たちよ!!!!」
「ほう…」

リヒトラウムの警護という契約は反故になってしまったものの。
『先生』は、新たなビジネスを堀内に持ちかけていた。来たるべき日に備えての、身辺警護。
いざと言う時の命綱、堀内がそれを断るはずはなかった。

「貴様のところの粛清人はどうだ!さすがに『赤の粛清』『黒の粛清』レベルではあるまい!残念だったな!我々の力
を甘く見たのが、詰めの甘さだったなあ!!!!!」

さすがにその契約は他のブラザーズ5には隠していたのだろう。
思わぬサプライズに安堵し、老人1の高笑いに釣られ、同じように笑い始めた。
響き渡る5つの笑い声。そのうちの1つが、モニターの映像とともにぷつりと途絶えた。

292 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/06/03(金) 20:16:03.59 0
「…え?」

突然の出来事に、呆ける間もなく。
大きなモニターが、次々と沈黙してゆく。
何かが、潰れる音。引き千切られる音。破裂音。断末魔。
残されたのは、すっかり狼狽している堀内の顔を映し出しているモニターのみだった。

「自分らを甘く見たつもりはない。あんたたちがうちらと敵対した場合…真っ先に頼るんは、『先生』んとこやろ。だ
から…先手、打たしてもらいました」
「は…はぁ!?」
「今の5人のおっさんは年だけ食ってる無能な連中ばかりやから。うちらが責任もって、首挿げ替えます。そう言うた
ら『先生』、快諾してくれたで? 自分ら、騙すのをな」
「ば、馬鹿なぁ!!こっちは億単位の手付金をやつらに払ってるんだぞ!!それをいとも容易く裏切るだと!!!そん
な、そんなことが」
「どうでもええけど、お客さんやで?」

裕子の言葉と同時に。
老人1の邸宅内の書斎、その重厚なドアがゆっくり開かれた。
おかっぱ頭の、小さな少女。

「だ、誰だ!!!!」

わかってはいる。
だが、訊ねずにはいられない。
相手が、何者なのか。
そして、これから自分が「何を」されるのか。

「なかざわさーん、おじさん一人しかいないんですけど?」
「佳林ちゃんの好きなじっちゃんやで。よかったなぁ」
「えー、佳林は好きじゃないのに」

堀内を無視し、デスクの上にあるモニターの裕子に話しかける粛清人。

「貴様!!俺の!俺の質問に!!!!」
「じゅてーむ、びやん?」
「は?」

それが、学生闘争の混乱に乗じ財を成し、この国を掌握するまでとなった五本指が一指の、最期の言葉だった。

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