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【小説】リゾナントブルーのМVからストーリーを想像するスレ 第134話 [無断転載禁止]©2ch.net

1 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/10/30(日) 21:49:38.37 0
「未来を紡ぐっつったのは誰よ!」

さゆみはれいなの体を強引に抱え、男に背を向けて走り出す。
無謀だとは分かっていた。だが、此処で自分まで諦めてしまうわけにはいかない。
約束したのだ。たとえ、もう二人しか居なくても、仲間がいる限り、あの頃の9人が護りたかった世界を護ると。

第133話『the new WIND―――』 より

前回のお話はこちら
【小説】リゾナントブルーのМVからストーリーを想像するスレ 第133話
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287 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/11/05(土) 21:43:43.77 0
保全代わりに前スレの>>341-349のつづきです


500メートル先の北東。そこに何があるのか、れいなにもわからないではなかった。
罠を張っているはずだが、それで果たしてあの男を倒せるか否かは、確証はない。
それでもれいなたちは、必死に追い立てていく。
圧倒的な力を有し、何度攻撃を繰り出しても倒れることなく反撃し、たったひとりで戦場に佇む黒衣の男を。

お前は、何のために、闘う?

その姿に、答えはないと知っていても訊ねたくなる。
たったひとり、ダークネス側に生まれながら、仲間もなく、誰彼問わずに破壊する衝動しかない。
リゾナンターだけでなく氷の女王すらも倒してきたこの男の望みは、なんだ?
例えばこの世界の、ありとあらゆるものを破壊し尽くしたとして、その先にあるものは、なんだというのだ。

男が刀を振り下ろす。
途端、一帯が熱を帯びる。
リンリンから奪った“発火能力(パイロキネシス)”による火球が炸裂する。
慌ててれいなが刀の具象化を解き、リゾナンターたちをドーム状の膜で覆った。
火球が直撃し、膜を揺らす。
男はこの好機を逃さぬよう、次々と火球を繰り出していく。
れいなは膜を具象化するだけで精一杯で、攻撃に転じられない。

288 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/11/05(土) 21:44:11.85 0
「田中サン、しっかり!」

ジュンジュンがれいなの体を支えるが、膜の具象化が段々と弱くなっていく。
長くはもたない。先ほどは気を固めて壁として具象化したが、今度はドーム状に保つ必要がある。
この技の応用もまた、今が初めてで、体力も残り少ない。
久し振りの戦場に復帰で、肩慣らしどころかいきなり本戦に投げ出され、もう心身ともに限界を迎えつつある。
どこかのタイミングで膜は壊れる。その時に、リゾナンターたちが一斉に攻撃するしかない。

「小春!合図したら全弾撃ち尽くして!」
「全弾って言っても、もうそんなに残ってませんよ?!」
「いい!あるだけ撃って!あと500だけ先に追い立てられれば良い!」

さゆみの指示に、小春は体に纏わりつけたマガジンを装填し、セーフティーを解除する。
小脇に自動小銃を構え、いつでも撃てる準備をした。

「久住サン、援護しまス」
「……お願いしたいけど、小春、リンリンに当てない自信ないよ?」
「信じてマスだから。問題ないデス」

リンリンはそう告げると、小春から少し距離を保ち、男に正対する。
ジュンジュンもまた、れいなをさゆみに任せ、プッシュタガーを構えた。もう、ナイフの刃はこぼれているし、暗器も残り少ない。
だが、男もこれほど火球を繰り出していては、力のオーバーフィートを起こすはずだ。
いずれにせよ、れいなの膜の具象化が崩れた後が、勝負の分水嶺だ。

289 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/11/05(土) 21:44:53.99 0
「行くよ、小春、ジュンジュン、リンリン!」
「さん、のー、がー、はい!!!」

れいなは渾身の力を込めて具象化していた膜を壊した。
激しい音を立てて崩れた膜は、ガラスのように鋭く尖り、男に向かって飛び散っていく。
同時に、小春が自動小銃をぶっ放つ。
ジュンジュンが左から、リンリンが右からそれぞれ男に飛びかかる。
れいなは膝を折り、激しくせき込んだ。
もう、終わりは近い。


-------

「あの研究者のことだ、絶対此処にあるはず」

新垣里沙はそうして、廃墟と化した部屋をゆっくりと捜査し始めた。
生物の匂いが全く感じられない無機質な部屋だが、どれだけの暴力が行われていたか、想像に難くない。
命への暴力。それは人が人であるという最低限の保証すらもない、地獄だ。
いや、むしろ、この部屋しか知らない子どもたちにとっては、この地獄こそが世界のすべてだったのだろう。
苦々しく顔を歪めた高橋愛は、部屋を見回すと、すっとしゃがみ込む。

「どこに、あるかな」

此処にあるのは間違いない。完璧主義の研究者に失敗の二文字は似合わない。
だからこそ、不具合が起きたときには必ず代替案を用意しているはずだ。

290 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/11/05(土) 21:45:13.74 0
悠長にしている暇はない。早くそれを見つけねば、「彼女の時間」が進んでしまう。
そして、早く援護にいかなくてはならない。
あの男の襲来から始まった、リゾナンター解体劇のすべての、新しい風の行く末を、見守らなくてはならない。

愛は床を指でなぞる。
明らかに、先ほど流れたと思われる血が大量に飛沫していた。
これは、氷の魔女が流したものだろうか。
死体は此処にはない。あの男がバラバラにしていなければ、彼女はまだ生きているという事になる。
だが、今はそれよりも、薬品を探す方が先決だ。

「愛ちゃん」

里沙の声に顔を上げる。
彼女は数メートル先で呼んでいた。

「ここ、あのとき培養液があった場所」

里沙から聞いた、この部屋の話。
生命の香りがせず、自分の欲求を満たすためだけに使われていた人体実験の部屋。
その部屋の中心に、彼女を入れた培養液があった。
大型の試験官のようなカプセルの中に、彼女はいた。
膝を抱えて体を丸め、肌色の皮膚を見せ、黒くて長い髪を揺蕩わせていた。
吸器のようなものを付けて、培養液の中でも酸素を吸入しながら、“人”として生きていた。
成長剤と体内時計を進められた、人ならざる人に、なりつつありながらも。

291 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/11/05(土) 21:45:42.18 0
「この床だけ、妙に綺麗じゃない?」

確かに、里沙の言う通りだった。
埃や血に塗れた部屋だが、その一角だけ、穢れが拭き取られているようだった。
いや、むしろ此処は「穢れを払う」場所なのかもしれない。神聖な、ある種のサンクチュアリのような場所。
あの研究者―――紺野―――がどのような意図を持っていたかは分からないが、此処が彼女の聖域だ。

愛はその床に手を翳す。
指先に微かな電流を感じた。どうやら、正解のようだ。

愛の手の上に、里沙も重ねる。
ふと目を閉じて、微かな詠唱。
パリパリと空間が歪み、その禍々しく、忌々しい結界を壊そうとする。

すると、愛と里沙の脳内に、たくさんのビジョンが流れ込んでくる。
子どもたちの叫び声、血に塗れた姿、ビルの屋上、手首から溢れる血。
ああ、これは。
此処に居た少女たちの、哀しみだ。


―――「検体番号183。その子は施設でもかなりひどいいじめを受けていた。友だちがいなくて自殺未遂も繰り返している」

―――「検体番号196。攻撃性が強くて施設の子どもたちにひどい暴力を振るい、なんども警察沙汰になってる。職員たちも手に負えない存在」

―――「検体番号229。養父から虐待を受け、愛情の欠乏から万引きや補導を繰り返し、自分の居場所を見失った」


あの時に聞いた紺野の声が、脳内に響く。

292 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/11/05(土) 21:46:20.17 0
私には結局、過去の彼女たちを救うことはできなかった。
いじめを受けていた瞬間も、虐待をされていたときも、自殺未遂をしたときも、私たちはそこにはいなかった。


―――「お前の親父なんだろ!この人殺し!」

―――「病院で暴れたサイコパス」

―――「お前も同じだよ、死ねよ」


次々に浴びせられた、痛み、苦しみ、ツラさ。
その心に入り込んできた闇。そして人体実験というもう一度の地獄の中で、彼女たちは生きてきた。
光もなく、希望もなく、ただただ絶望を繰り返すだけの、毎日。

覗いてるこちらが、心を抉られ、闇に呑まれそうになる。
彼女たちのことを、私たちはまだ、何も知らない。

それでも、こんなにも、哀しみが共鳴する。
それは、光も希望もないからこそ、縋るからか。

ただ一縷の、奇蹟という名の陳腐な想いに。

「過去は、救えない」

愛ははっきりと、そう口にする。

293 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/11/05(土) 21:46:44.54 0
閉ざされた床はまだ、その結界を張り、決して破られないように抵抗する。
それでも強引に、開こうとする。
過去は変えられない。分かり切った事実だ。
だけど。
だけど、未来なら。
これから歩む未来なら。

未来は神様のレシピで決まる。とは、何処かの小説のフレーズだ。
なるほど、その通りかもしれない。
運命という言葉で当てはめるよりも、よっぽど綺麗な言葉だ。
ああ、まるで、あの管理官に影響されたようだ。
彼もこうして小難しい言葉を並べ立てていた。

ただ、神様のレシピが正しいとは限らない。
彼がどんな調味料を加えるかで、その後の結果は変わるのならば。


「だから、未来を、変えるんだよ」


愛と里沙は、同時に力を込めた。
二人の想いが、彼女たちの過去の想いと、共鳴する。
微かな蒼い光が、分散していく。
確かな決意をもって放たれていく姿は、まるでプリズムのようだ。

294 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/11/05(土) 21:47:19.18 0
閉ざされていた床が、観念したように口を開ける。
そこには、しっかりとした小型のアタッシュケースがあった。
用心には用心を。あの研究者らしいことだ。
だが、これこそが、「彼女の時間を止める」術だ。

愛がアタッシュケースを手に取る。
上階で、けたたましい爆発音がする。
あの男たちとの闘いも、もう終焉に近いのかと確信する。
里沙に頷き、二人は走り出す。

きっともう、この部屋に来ることはない。
もし、次に来ることがあるとすれば、この闘いが終わったときだ。
そしてそのときは、必ず、この部屋をすべて燃やし、無に帰すと、決意した。


-------

愛佳たちの言う地点まで、残り340メートルほどまで押し込んだ時、男が大きく咆えた。
同時に、周囲の瓦礫が浮かび上がり、四散する。
それはまるで、力が暴走したかのような姿だった。
れいなたちは慌てて男から離れて防御するが、突然のことに驚きを隠せない。

「なん…急に……」

男は肩で息をしながら、両手で頭を抱えた。
苦しげに全身を震わせる様は、これまで見たことがなかった。

295 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/11/05(土) 21:47:42.34 0
罠というにはあまりにも生々しい姿に、れいなたちは寧ろ、攻撃するのを躊躇してしまう。

―――「やっぱり、あいつも…」

愛佳の言葉が、脳内に響く。
彼女は何かを知っている。だが、言葉にするのを躊躇っているようにも見えた。
まどろっこしいのは嫌いだ。言いたいことがあるならハッキリ言えとれいなは叫びたくなる。
が、それより先に、リンリンが動いた。
手首を刈り取らんとフォルダーナイフを掲げる。
黒衣の男は、勢いよく振り下ろされるそれに対応が間に合わなかった。

夥しい鮮血。
朝陽に照らされて血雨が降り、リンリンの顔にべったりと付着した。
男は左手首を刈り落とされ、怒りに震えた。
全身で体当たりをし、リンリンを弾き飛ばす。
落としかけた刀を右手一本で握り直し、その首めがけて振り下ろす。

小春が最後のマガジンを装填し、放つ。
肩と腹を直撃した直後、ジュンジュンがさらに追い立てる。
男が後退する。

―――「あの男はもう限界です!畳みかけてください!」

もう、なりふり構っていられないのは、お互い様のようだ。
無様になっても、この闘いを終結させようとしている。カッコいい勝ち方なんて、きっとこの世にありはしない。
気になることは山積みだが、どうせ今は答えてくれやしない。
だったら全部、後回しで良い。
こいつを斃して、全部全部、終わらせてやる。

296 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2016/11/05(土) 21:48:24.20 0
れいなは歯を食いしばり、前進する。
その間に、さゆみは“治癒能力(ヒーリング)”を施し、リンリンの頭を撫でる。

「大丈夫?」

血まみれの顔に、訊ねる。
その赤き液体が、彼女のものではないと分かりながらも、さゆみは訊ねずにはいられなかった。
あの日、さゆみは病院で、彼女を止めることができなかった。
その後悔が今になって押し寄せてくる。
どうして、あのとき彼女を止めなかったのか。それどころか、行かせることを推奨したのか。
結局、私を連れて行ってはくれなかったか。
神獣を護る立場であるからこそ、だったのだと理解している。
でも、それでも、それでもリンリン、さゆみは。

「えへへ、道重サン、リンリン元気デス、ハイハイ」

膝の上で、リンリンは力なく笑う。
あの頃のように柔らかく目を細めて、それでも屈託のない、子どものように。

「……リンリン、さゆみ、言ったじゃん」

だからさゆみも、笑って返そうとした。
けれどその声は、意志に反して、震えてしまう。

「人ってウソつくとき、左斜め上を見るんだってね」

さゆみの言葉にリンリンは困ったなあというように、あの日と同じように、笑った。

「ウソうまく、なれマセンね」

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