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【小説】リゾナントブルーのМVからストーリーを想像するスレ 第139話 [無断転載禁止]©2ch.net

1 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/11(水) 21:44:29.40 0
黒塗りの刃は鞘へと収まり、不気味な気配が一切遮断される。

 「行こう、レイナ」
 「はい加賀さん」

女、加賀楓の後を異獣、レイナが付いて歩いていく。
血生臭い世界を背負い、加賀は静かに前を見つめている。

第138話『朱の誓約、黄金の畔』より

前回のお話はこちら
【小説】リゾナントブルーのМVからストーリーを想像するスレ 第138話
http://hanabi.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1482840273/

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165 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:08:40.80 0
男の腕が鋭く、さくらの顔面を捉えようとする。
冷静にその腕を捌きながら、相手を見極めようとする。
一瞬、男がバランスを崩した。
その好機の訪れに、さくらは男の手首を両腕で掴み、思い切り捻り上げた。
体術はさほど得意ではない。だから、目の前にある機会を逃したくはなかった。
懇親の力を込め、その骨を砕こうとする。
男は舌打ちし、膝でさくらの腕を蹴り上げた。

再び、男とさくらの間に距離が生まれる。
男の目には、焦りの色は浮かんでいなかった。
先ほどの一撃で捉えきれなかったことを不快に感じている様子はない。
その余裕が何処から生まれるのか、さくらは訊ねたくなる。

「なぁ、小田。力が欲しくないか?もっと強い力が」

男はよほどおしゃべりが好きなようだ。
スプリンクラーからの雨に打たれたさくらを舐め回すように眺め、口角を上げる。

「“時間編輯(タイムエディティング)”がさらに長時間使えるようになれば、神になれると思わないか?」

さくらの持つ能力。
“時間編輯(タイムエディティング)”によって生まれる、空白の5秒。
時間を超えるという、神の領域に最も近いとされる能力。
何度も術を行使することは難しく、その反動はかなり大きい。

166 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:09:11.65 0
たった5秒で何ができる?と、この能力を有するからこそ、ずっと自問自答してきた。
“5秒”という短時間。
最初は、じゃんけんでズルをするとか、人の顔にいたずら書きをするとかしか、思いつかなかった。
実生活でも、5秒では些細なことしかできない。

「1分、1時間、いや、1日と時間を止めれば、世界地図を書き換えられる。
 永久に時間を止めれば、世界は箱庭と同じだ。歴史をやり直すことだってできる。
 お前の力を高められれば、それが可能になるんだ。俺と来い。俺の研究機関で、お前のチカラを伸ばすんだ」

べらべらと喋る脂の乗った舌。きっと火をつけたら良く燃えるのでしょうねと思う。

「それでも、俺と組まないつもりか?」

心底残念そうに、聞き分けのない子どもを宥めるように男は言う。
怪訝な瞳を返すと、滑稽なピエロのように肩を落とした。
この会話の噛み合わなさは、自分が愛しているのになぜ相手が愛してくれないのかを理解できない、一種のストーカーのようだと思う。
そもそも思考回路が違いすぎるのだ。

幽霊やお化けより、最も怖いものは人間だとはよく言ったものだ。何も会話が成立せず、自分本位に解釈して理論を進める男が、怖いと思った。
だが、この男は「能力者」だ。その時点で、他とは一線を画している。その事実が、さくらに安心感を与える。
不思議なパラドックスだ。
さくらの思考は、「能力者が異常」という前提の元に成り立つ。自己の存在を卑下する事に、何の恐れもない。
能力を有しているという特殊性は、異端であり、それでいて自分と同質であると認識できる。

167 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:09:51.82 0
寧ろ、普通に生きている人で、何を考えているか分からない相手の方が、怖い。
能力と異質性がない分、通常の生活に紛れ込み、何を企んでいるのか見えなくなる。
もちろん、「能力者」も、普通の人間からすれば、生活に紛れ込んだ化け物だという認識はあるのだけれど。
立場の差だろうかと納得しつつ、ちらりと視界の端に後輩を映す。
危うい狂気のカケラを孕んだ彼女は、雨に打たれて体温を奪われていた。
もう時間はない。次の一撃で決めるしかないと、覚悟する。

異端。異能。異常。
それは認識している。自分が異常だと分かっているのに、仲間の立場を案ずる。
滑稽だろうか。
人間ばなれした力を有するのに、人間のような感情を抱くのは。

全く。
いつから、こんな風に、なったのかな?

自分の思考もまた、何処か危うさを秘めているなと認識しつつ、構える。
雨に煙る部屋の中で、さくらはふと、考えた。
男の云う、「研究機関」。そこに行けば、能力を最大限に開放できる、と。
単に酔狂で話している可能性も捨てきれない。
だが、この男は自己陶酔型で、プライドが高い。そして子どものような残虐性と純粋性を持ち合わせている。
さくらを呼び出すには、仲間を傷つければ良いという思考も、「野中美希を気にかけている」という彼の一義的な前提の上に成り立っている。
それはあながち間違いではないが、それを盲信するあたり、子どもだ。

168 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:10:16.36 0
「その研究機関に入れば、私の“時間編輯(タイムエディティング)”を5秒以上にできると?」

初めて、さくらが自分に興味を示したことに、男は目を輝かせた。
あからさまに興奮し、今にも手を握ってきそうな雰囲気すらある。
それは、共同研究者に喜びを分かち合うそれとも似ていたが、残念ながら男は、そんな崇高な思考の持ち主ではない。

「そうだ。精神の深い部屋に潜り、奥にある鍵のかかった扉を開ける。そうすればチカラは開放される」

それは比喩表現だと分かったが、興味深い話でもあった。
確かに私たちの能力は、常に開放状態ではない。そんなことをすれば、身体への跳ね返りが大きすぎてすぐに倒れてしまう。
タイミングを計り、能力の扉を開いて闘うが、もしその扉を開放状態にして肉体を保てる術があるとすれば。
それをこの男が、あるいはこの男の研究機関が知っているとすれば―――

「……っ、さ……」

雨に溺れかける美希が、こちらをまっすぐに見ていた。
相変わらず、迷子の子犬のような瞳で。

「そうね、5秒という短時間でできることなんて、限られていますからね」
「それが永続的になる可能性もある。どうだ?」

さくらは前髪をかきあげ、微笑む。

169 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:10:47.43 0
「興味深いですけど、私には必要ないです」

瞬間、男が姿を消す。
能力を発動したのだと悟る。
右か、左か、後ろか、上か、何処から殴りかかって来るつもりだ?どうせ殴ってでも連れて行こうとするんでしょう?その「研究機関」とやらに。
さくらは腰ベルトに提げたそれに、手を伸ばす。
果たして男は、正面から訪れた。
両腕を広げてこちらを抱きしめようとする姿に戦慄しながらも、さくらは能力を発動しようとする。

その刹那、空気が歪んだ。咄嗟に、チカラを封じる。
男の腕が大きく空振りした。
足がふらつきながら、男は何が起きたかを即座に把握する。さくらもまた、事態を理解した。

“空気調律(エア・コンディショニング)”だと、気付く。

男の姿が再び消えた。
まずいと思ったのも束の間、男は美希に馬乗りになっていた。

「邪魔を!するな!!」

二度、三度、四度と殴打を繰り返す。

「俺と、あいつの、戦闘を!邪魔すんじゃねえ、くそガキが!!」

170 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:11:11.16 0
狂気とは、ある種、あの男のことを言うのかもしれないと思う。
男はこの饗宴を楽しんでいるのだ。さくらとの闘いは、男にとっては、性行為にすら似た興奮を覚える手段なのだろうか。
野中美希は奥歯を噛み締めながらも、男にいたぶられ続ける。吐いた血が男の拳を汚す。
さくらは、「やめて!」と叫んだ後、両腕を広げた。
その動作に、男が反応する。

「あなたと行く。だから、もうその子を汚さないで」

男と美希がほぼ同時に、さくらを見つめる。歓喜と、そして絶望に満ちた瞳が交錯する。
美希が必死に何かを紡ごうと口を動かすが、音になることはない。

「その子は放っておけば死ぬわ。そんなことより」

さくらの声に導かれるように、男はふらふらと視線をよこす。

「早く飛んできて?そして空間を越えて、私も連れて行ってくれない?」

あなたの、研究機関へ。
そう言わんとした時には、男は既に能力を開放していた。
男が三度、消える。こちらへ来るのだ、その能力をもってして。

「っ!ぐっ、…ぉ、小田さんっ!!」

必死に、美希が吼える。

171 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:11:33.78 0
「………ばかね」

諦めたようにさくらが微笑む。
即座に能力を開放する。
世界が止まる。さくら以外のものが呼吸を忘れる。

5秒という短時間でできること。
じゃんけんでズルをするとか、人の顔にいたずら書きをするとかしか、何処かの歌の一節のように「目を閉じて深呼吸」するか。
そんな僅かなことしか、できない。

だが、ある一節はこう記している。


―――「人生はたった二秒で 何もかも変わってしまうけれど」


小田さくらの能力で成せること。
5秒で、できること。
自問自答しても、いつまでも明確な答えは出てこない。だけど、今、できることはある。

さくらは一歩だけ前に踏み出し、腰ベルトからナイフを抜く。
自分の顎のあたりに水平に構える。

それだけなら、5秒でも、可能だ。

来い―――

172 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:11:58.04 0
能力が失われる。
世界が再び、息を吹き返す。

空間を超えた男が、さくらの目の前に「出現」する。
その下卑た笑みが、段々と曇ってゆく。
男には、何が起きたのかを即座には理解できなかった。
自らの喉に刃物が生えていると気付いたのは、まさに、5秒ほど経ったあとだ。

「っ?!」

簡単なことだ。
この男は、子どもじみた支配欲と、残虐性と紙一重の純粋性を持ち合わせている。それゆえに、真っ直ぐにしかやってこないと確信していた。
相手がどこから来るのか分かっていれば、待ちかまえることは容易い。
現れるポイントに立ち、ナイフの刃先を向けるだけだ。後は勝手に、向こうが罠の口へと飛び込んでくる。
たった5秒でも、それくらい、可能だ。
まあ、短時間であるがゆえ、喉への突き立ては甘く、まだ刃先しか皮膚を突き破っていないのだが。

「ぎ、さっ!」

男はパニックに陥りながらも、さくらの腕を掴み、ナイフを抜こうとする。
だが、それが、叶わない。
男の手は、空ばかりを掴む。

それが何故であるか、さすがに認識できた。

173 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:12:22.13 0
男は喉から血を溢れさせながら、「のながぁぁ!!」と叫ぶ。
迸った血が雨のように降る。
“空気調律(エア・コンディショニング)”を使う野中美希は、雨の中で、溺れないように必死に、藁にすがる。

「5秒でも、できること、あったでしょ?」

さくらはそうして、一気に腕に力を込めた。
ナイフは深々と根元まで突き刺さり、男の呼吸を奪っていく。
そのうちガリガリと喉をかきむしり始める。
異物を追い払おうとするも、根元まで突き刺さるそれに爪を立てたところで、皮膚が削られ、血が溢れるだけだ。
気が動転しつつも、男は活路を見出そうと必死だった。
が、結局は能力を発動することもなく、雨に脚をすくわれて倒れ込んだ。血だまりの中で、男の世界は為す術なく閉じていく。
さくらはその醜態を見届ける気にもならず、大股で美希へと急ぐ。

「っかはぁ!」

血を噴き出した男が、その脚を掴んできた。
まだ意識があるのだろうかとさくらは辟易する。

「それ以上、野中にも、私にも触らないでくれます?」

冷たく言い放って一歩踏み出すのと、男が事切れたのはほぼ同時だった。男の腕は血を失い、怖いほどに真っ白だった。
これまで、もう何人、こうして人の生命を奪ってきたのだろうとぼんやり考えながら、美希へと走る。

174 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:12:45.76 0
美希は、男から受けた暴行と、度重なる能力の公使により、すっかり疲弊しきっていた。スプリンクラーのせいで体温も奪われている。
動かすのは得策ではないと分かりながらも、その身体を抱き、部屋の外まで移動した。これでひとまず雨は凌げる。

「譜久村さん呼んだから。もう少し我慢して」

美希に呼びかけるも、彼女には届いていないかもしれなかった。
荒い呼吸を繰り返しながら、必死に「生」を生成する彼女には。

「裏切ったと思った?」

素早く止血しながら、答えが返ってこないと分かりながらも、さくらは問う。
先ほどの美希の瞳は、寂しいほどに濡れていた。哀しいと叫び、行かないでと吼える様は、道を失った子どもと同じだった。
肋骨に触れながら、ああやはり折れていたかと肩を落とす。
早く聖に来てほしい。治癒能力を行使してほしい。
こんなときに、“時間遅延(タイムディレイ)”が使えれば、彼女の傷の浸食を抑えることができるのに。
今の私の能力で、止めてしまっては意味がない。

男の話していた、「研究」と「組織」を改めて考える。
もしその研究に触れれば、この能力の別の可能性も見えてくるのだろうか。
例えば、相手の体感速度のみ遅くするとか、世界の呼吸を1分近く奪うとか、あるいは過去への干渉も可能に―――

思考が走っていくのを止めたのは、美希の小さな手だった。
彼女は震えながら、さくらのシャツの裾をぎゅうと握る。

175 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:13:47.30 0
道を失くした子どもが、やっと見つけた母の腕に縋るように。
深い森の中で、射し込んできた光を淡く掴むように。

改めてその姿を見る。
肉体的にはもうボロボロで、一刻も早く手当てが必要だった。
だが、さくらは何処か、達観している。
聖が間に合うという確信からか、仲間を失うことに慣れてしまった哀しみからか、何も、恐れない。

「…………」

何かを彼女は言おうとしていた。その言葉の存在に気付きながらも、目を伏せるべきだろうかと考えた。
美希が伝えたいことの奥にあるものは、何となく見えていた。
本当に裏切ったと思っていたなら、彼女は“空気調律(エア・コンディショニング)”を発動できなかった。
さくらの真意を何処まで汲み取っていたかは定かではないが、美希は分かっていたはずだ。あの場で自分が成すべきことを、しっかりと。

「しゃべらないで?結構、重傷だから」

血と水を拭いながら、さくらは言う。だが、美希は諦めることなく口を動かした。
そこから漏れるのが荒い呼吸だけだったとしても、必死に音に乗せようとする力は、ああ、彼女にしかない「強さ」だ。

「………で…」

176 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:14:09.71 0
さくらの心に流れ込んでくる想いが、熱く震える。
それは、すぐ傍までやってきた譜久村聖のものと、今、この手を掴んで離さない未知数の力を持った、野中美希のものだ。

「行か……ない、で……ひと、り……は」

危ないです―――。と微かに聞こえたのと、聖が階段を駆け上がってきたのはほぼ同時だった。
聖は素早く複製能力で、美希の傷を治癒していく。

「ずいぶん無茶したね」
「すみません。私がついていながら…」
「小田ちゃんのせいじゃないよ。野中にとっても良い経験だと思う。それより」

聖は、水浸しの部屋を一瞥し、その真ん中で事切れている男を目に映す。
喉にナイフを生やした姿は特異だったが、そこに興味は抱かない。

「あの人、なに?」
「本人は“空間超越(エアー・トランスセンデンス)”の使い手と言っていましたが、実際は“空間切断(エアー・カット)”じゃないかと」
「……何で、そう思うの?」

美希の肋骨に手を伸ばしながら、聖は問う。
さくらはあの時の闘いを振り返りながら、あの男が“空間超越(エアー・トランスセンデンス)”と言いつつ、瞬間移動のように能力を行使していたことを説明した。
その上で、「ボタンが消えたんです」と言う。

「あの男が過ぎ去った後、ボタンやジャケットの袖が消失したんです。ちぎれたのではなく、消えました。
 それは一定の空間を消し去るようで…空間と空間の間をぽっかり切断できるチカラなんじゃないかと」
「野中に生まれたチカラと似てるってこと?」

177 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:14:48.17 0
「近いかもしれません。あの人は目の前にある少しの距離を切断し、その先の地点へと飛ぶことができた…
 それを“超越(ジャンプ)”と勘違いしていたみたいですけど」

あの男が本来有していた能力、“空間切断(エアー・カット)”。
もしそれを行使していたら、かなり強敵となっていたはずだ。
まだ確認が取れていないが、切り取られた空間とともに、ボタンやジャケット、そして雨が消失した。
そしてその消失は、まだ“戻って”きていない。
もし完全にこの世界から消滅するならば、例えば誰かの身体を跨いで空間を切断したとしたら、もうその身体が再生することはない。
確実に訪れる死に対抗する術はない。
男は自分の能力を過小評価していた。それこそが敗因だ。自信家に見えて、案外、小心者だったのかもしれない。


―――神になれると思わないか?


神になるチカラ。
自分の領域を超える、“人”を超えた存在への、挑戦という名の冒涜。

「小田―――」

美希の傷を癒した聖が、静かに自分の名を呼んだ。
さくらははっとして顔を上げる。
聖の冷たい瞳が、さくらを捉える。
その時さくらは思った。場違いながらも、「ああ」と納得した。

ああ、この人は、リゾナンターのリーダーだと。

178 :名無し募集中。。。@無断転載は禁止:2017/01/15(日) 22:15:08.11 0
「潜入捜査とか言って、単独で勝手に行かないでね?」
「なんのことです?」

努めて冷静に言うが、聖は首を振る。
そのまま何も口にすることなく立ち上がり、ぐっと伸びをした。

「早く野中運んで帰ろう。風邪引かれても、そこまで面倒見られないよ」

そうして聖は、ジャケットを羽織り直し、廃ビルを後にした。
さくらは美希の肩を抱き、ゆっくりと歩き出す。

男の所属していた組織がダークネスであることは間違いないが、「研究機関」という言葉に引っかかりがあった。
何を企んでいるのか、どうやら他にも知るべきことがあるようだと悟る。

だが、聖はそんなさくらの思惑を感じ取っているのだろう。先に牽制されてしまったなと苦笑せざるを得ない。
聖の、リゾナンターを導く大切なリーダーの背中を見ながら、一歩ずつ歩く。


―――「行か……ない、で……」


―――「単独で勝手に行かないでね?」


美希の温もりが、鼓動が、必死に叫んだ命が、さくらに伝わってくる。
二人の言葉が交錯する中、さくらは一人、ある決断を下していた。

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